蚊帳の中の日記

ゆるく生きてます

「web制作者のためのUXデザインを始める本」を読んだ

最近よくUIとかUXとかデザイン寄りの領域に興味が湧いており、関連の教材や教育動画を見てた経緯でタイトルの本に手を伸ばした。

ユーザーの本質的な欲求・価値を調査してWEBやアプリサービスに活かす基礎的な方法論が書かれている。 いままでUX(ユーザーエクスペリエンス)について学んだことがなかったので不安だったけど、読みやすくて、現場での活用の仕方についてのアドバイスが書かれていたので、なかなか実用的な一冊だったので気になった箇所をまとめておこうと思う。

認知的ウォークスルーによるユーザービリティ評価

第2章で「ユーザビリティ評価(ユーザービリティテスト)」(第5章のユーザー調査とは別)に紹介されていたのが「認知的ウォークスルー」に関してだ。満足度・効率性・有効さという3つの指標をもとにサービス利用時の評価を行い、サービスを操作した時の問題点や改善点を見つけることできる手法。制作者以外の被験者が主観評価実験のようにサービスを利用して、その様子を観察・調査して問題点を洗い出したりする。

自分の仕事では、普段の開発で被験者と呼ばれる人を呼んでサービスの問題を洗い出すという工程はなく、サーバサイドに乗っているログや問い合わせ、もしくは偶然見つけた改善点を見つけて対応するというパターンがほとんどなので、あまり利用者の声を直接聞くという機会はない。想像で「自分だったら、どうやって操作するだろう?」「どこがわかりづらいだろう?」と考えながら、自分のいままでのITリテラシーをもとに改善を行うことが多かったので、ユーザービリティ評価は利用者の客観的視点によって問題点を洗い出せそうなので是非実践したいな〜とか思ってる。ただ大学時代に評価実験とかで苦労したのが被験者集めで、そのあたりの問題をクリアできないと難しそうという問題がある。

こういったときに「認知的ウォークスルー」役に立ちそうで、何をするかというと、ユーザーになりきって評価を行う専門家評価なのだ。詳細は本書に書いてあるけど、普通に「なんか楽しそうだな」という印象で更にすぐに使えそうな手法だなと思う。

ドナルド・ノーマンの良いデザインの4原則

ユーザービリティ評価等で出てきた問題を分析する際は一定の観点をもっていないと本当に問題なのかどうかがわからない。この一定の観点の一つとして本書が上げていたのが、ドナルド・ノーマンの良いデザインの4原則だ。(余談だけど大学時代にドナルド・ノーマンの書籍は読んだことがあって、またこの人の知識に触れたのは久しぶりだったので懐かしい気持ちになった。)

  1. 可視性(ひと目見て何をすればいいのか・何が起きるのかわかる)
  2. 良い概念モデル(どんな仕組みで動いてて、同操作すればいいかわかる)
  3. 良い対応付け(捜査対象とその結果が予め分かること)
  4. フィードバック(操作後に意図した結果が得られるかわかること)

こういったデザイン原則と呼ばれる類はたくさんあって、他にもアクセシビリティとか、ニールセンのどうたらとか色々ある。iOS humna guidelineなどプラットフォームを限定した原則なども提唱されている。そういったたくさんの原則の中でも有名なのが上記の4原則。

特に1, 2とかは年代や文化によってもUIの解釈に違いが出ると思っていて、スマホとかパソコンを使い慣れてる人ならUIがボタンとか、フォームだととかわかるかも知れないけど、そのあたりになれてない人は「そもそもボタンなのか?フォームなのか?」「これを触るとどうなるのか?」といったことが起きやすい。最近、親が「これは何ボタン!?押すとどうなると???」って必死に助けを求めきたときがあって、「あー、頑張って可視性や概念モデルを考えて作っても、受け手によってこんなに理解に差があるんだな」とfmfmと思ったけど、この話は上記の事と関連してる気がする。

オズの魔法使いを使ったユーザービリティ評価

第3章のプロトタイピングの章で紹介されたのが「オズの魔法使い」。なんかとりあえずタイトルからして楽しそう。

何かって言うと、作成されたワイヤフレームの評価を行う際に。ワイヤフレームが書かれた紙と指だけでサービスの評価を行う手法。紙と指と評価してくれる第三者がいれば道具の準備が比較的容易にできるのでプロトタイピングの段階でのユーザービリティ評価がしやすそう。紙じゃなくてもjamboardみたいなインターネット上でのホワイトボードなどでも実現できそうなのでお手軽感がある。

最近はFigmaとかでプロトタイプも作りやすくなった気がするので、わざわざこういったアナログ形式の手法を取るのもどうなの?という意見は飛びそうだけど、雑なUIを上に書いて、触って、また書いてをしやすいというメリットはありそう。

気をつけてほしいこととして「プロトタイピングなのに作り込み過ぎないように」と述べてて、プロトタイピングは、必要最低限の粒度と機能で本来のサービスの目的を達成できるかどうかを試行錯誤するためのツールということは念頭においておく必要は忘れてはいけなそうだ。

ペルソナの重要性

ペルソナという言葉自体は知ってたが、ターゲットユーザーとかと同じような概念なのかな?くらいで、いまいち必要な理由や作成の方法などを知らなかった。この本ではペルソナの具体的な作り方に加えて、2種類のペルソナについて紹介していた。

  1. 簡易ペルソナ
  2. 共感ペルソナ

まず、そもそもペルソナとは何かについて。

UXデザインの基礎となるのがペルソナで、サービスなどを利用してくれる典型的なユーザーの人物像を具体的に捻出して、自分たちが開発するサービスをどのように利用し、どういった場面に不満や満足を感じるかを想像して作り上げた人物像みたいなもの。この人達がいるかいないかで、サービス開発側の思い込みをできるだけ払拭して、本来の目的に沿ったサービスを考えることができる。最近デザイっぽいことも趣味でやったときに、ペルソナもしくはターゲットユーザー的な存在がないと根底となる情報がないので何を観点にデザインをすればいいのかわからなくなるので、これらの存在は大きいと思う。

雑にまとめると、簡易ペルソナは企画段階で当事者が想像したり、既存のアクセスデータやインタビュー記録によって形成された比較的プロジェクトの初期段階で作成するペルソナ。共感ペルソナは推論ではなく実際の分析データをもとに事業やサービスを長期的に運用して行く中で「自分たちが価値を提供したいターゲット」をより詳細に書いたモデルで、将来サービスの目的がブレないようにするための基本軸のような存在かなと思う。

共感ペルソナについては後半の第7章で紹介されていて、正直今の仕事で自分自身が利用する少ないかなと思うが、自身が関わっているサービスに似たようなユーザ像はあったはずなので見返す機会は取りたいと思った。

全体の感想

この書籍を読む前はUXとかUIとかCXとか違いがわからんという状態だった。読んでみると、ユーザー調査や分析をちゃんと行い、構造化シナリオやら親和図法やらペルソナやらで良い価値提供のための情報整理を念入りに行なって、カスタマージャーニーマップなどができたら、更に一歩引いた視点でサービス全体の改善点を模索し続ける非常にタフな仕事という印象。定量化しづらく考える範囲が広いが、やりがいのある領域だと思った。

"モノ"ではなく"コト"のデザインであるという言っている意味を少し理解できた気がする。